第17章 殺したくてたまらないという顔
「壁外調査中は何かと便利ですよ」
「トーマンは天才だね」
どうしてこんな簡単なことを思いつかなかったのだろうか。
壁外ではいつ何があるかわからない。そんなときに食べるものさえあったらなんとかなる可能性も高まる。
感心しながら、アリアは大きな口を開けて野戦食糧を頬張った。
美味くも不味くもない。食べ慣れた味。
少しずつ腹に溜まっていくそれはアリアの体に力を与える。
霞んでいた頭は晴れやかになり、手足に力が戻ってきた。
「次からはわたしも持ち歩くことにするよ」
ペロリと全てを平らげると、アリアは包み紙を畳んでポケットに捩じ込んだ。これでしばらくは動ける。
「ありがとう、トーマン。あなたさえよければ、今からペアで戦いたいな。一人は少し心細くて」
またいつ、さっきのようにピンチに陥るかわからない。
そんなときに他に人がいてくれたら生存の可能性も上がるというものだ。
アリアの提案に、トーマンは眩しいくらいの笑顔で頷いた。
「もちろんです!! アリアさんと一緒に戦えるなんて光栄です!!」
「あははっ、それならよかった」
しかしブレードもあと一対。ガスの残りも少ない。
なるべく節約して戦わなければ。
「アリア!」
そのとき、上空から声が聞こえた。振り返ると、そこにはリヴァイがいた。
アリアのそばに着地し、トーマンの顔を一瞬見やる。サッとトーマンの顔から笑顔が引っ込んだ。
「巨人掃討は終わりだ。全て討伐し終えた。今から馬をリフトで壁の内側に運ぶ。手伝え」
「りょ、了解です!」
巨人掃討は終わり。
リヴァイの口から告げられた言葉にアリアは思わずトーマンを見た。
遅れて安堵が腹の底から溢れる。よかった、これで休める。
「トーマンはこのことを他の奴に伝えて回れ」
「はいっ!!」
ビシッと背筋を正したトーマンはアリアとリヴァイに敬礼をしてから飛び去った。
その後ろ姿を見送ってから、アリアはリヴァイと共に屋根から降りた。