第2章 夢を見る
「第98期訓練兵団所属、アリア・アルレルトです。お会いできて光栄です。エルヴィン分隊長、ハンジ班長」
つい数分前まで寝起き眼だった目はぱっちりと開き、涙の跡も消えている。ハキハキとした口調は予定を忘れていた人間のものとは思えない。
アリアの前に立つ2人の男女は敬礼するアリアに、軽く手を振って楽にするように促した。
それに従い、休めの体勢を取る。
まずメガネをかけた女、ハンジ・ゾエが口を開いた。
「私はハンジ。ハンジ・ゾエ。君、調査兵団へ入団希望だって聞いたけど……ほんと? 私たちに気とか使ってない?」
ハンジの疑問に、アリアは控えめに微笑み首を横に振った。
「わたしが調査兵団へ入団希望というのは本当です。入団できた暁にはどうぞよろしくお願いします」
差し出された手と握手をし、答える。
嬉しそうにハンジは笑い、隣のエルヴィンを振り返った。
今度はエルヴィンが前へ進み出た。
「私はエルヴィン・スミス。君の噂は聞いているよ。立体機動、座学、対人格闘、それらすべてで良い成績で主席候補だとか」
「過分な評価を頂いています」
「君のような優秀な人材が調査兵団へ入団してくれるのはとても有難いことだよ」
エルヴィンとも握手をし、アリアは2人に背を向けた。
「では、こちらへどうぞ。訓練所を案内します」
「アリアのほかにも調査兵団入団希望者はいるのかい?」
「はい。わたしの聞く限りでは数名。皆、とても良い同期たちです」
グラウンドでは訓練兵たちが対人格闘術をしている。
普段は怠ける人が多い訓練だが、今日は調査兵団の上層部が来るということでみんな真面目に行っていた。
寒空の下だと言うのに、汗を垂らしている。
巨人相手に対人格闘が通用するかは疑問だが、大柄な体格の兵士と小柄な巨人程度なら戦えるのかも、しれない。あくまでも想像の中でだが。
「教官から聞いたが……」
訓練兵たちを見ながら、エルヴィンがアリアを見下ろした。