第17章 殺したくてたまらないという顔
翌日は昨日と打って変わって快晴だった。いっそ気味が悪いほどに。
アリアは巨人の返り血がついた頬を袖で拭い、ちらりと空を見上げる。
雲ひとつない青空だ。トンビが一羽飛んでいる。
足元にはうなじを抉り取られた巨人の姿があった。独特の匂いが鼻をつく。
トンビの甲高い鳴き声が響く。
巨人から降り、ブレードをしまい、駆け寄ってきたグリュックに飛び乗ると、アリアはリヴァイが向かったであろう地点へ走り出した。
壁外調査2日目が始まってからおよそ4時間。
そろそろ補給地点へつき、昼食を食べる予定だったのだが間が悪いことに巨人の群れが出現した。何かに向かって走っているのか、全ての個体が同じ方向を目指し、運悪くそれが陣形とぶつかる形になってしまったらしい。
特別作戦班はエルヴィンの指示により、各地へ散らばり、巨人討伐に当たっていた。
陣形に食い込んでいた巨人を何体か駆除した後、元の場所へ戻る手筈だったが、リヴァイが向かった方からはひっきりなしに煙弾が上がっている。
まさかとは思うが、増援として行くべきだろう。
そう判断し、アリアはグリュックを走らせていた。
「アリア」
そのとき、背後から声をかけられた。
振り返れば、そこには厳しい顔をしたエルヴィンがいた。
「エルヴィン団長!」
エルヴィンはアリアの横に馬を並べる。
「リヴァイがどこにいるかわかるか?」
「はい。ちょうどわたしもリヴァイ兵長の元へ行こうとしていました。案内します」
アリアが頷くと、エルヴィンはどこか安堵したように表情を緩めた。
何が、あったのだろう。
壁外調査における全指揮権はエルヴィンにある。通常ならば、そんな彼が自ら陣形内を動くことはない。
(……緊急事態を除いては)