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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第3章 正しいと思う方を



 晴れた日には散歩を。
 曇りの日には明日の晴れを願って。
 雨の日には家の中で読書をしたり、料理をしたり。
 雪の日には寒いね、なんて言って暖炉の前で暖まって。

 他愛もない会話をして過ごしたい。


 夕方、兵団の宿舎へ帰る道すがらそんなことを言えば、オリヴィアは顔をくしゃくしゃにして笑ってくれた。


『きっとアリアの選んだ人ならどんな人でも素敵よ!』


 沈んでいく夕日を見ながら、ただの妄想に過ぎない話を彼女は楽しそうに聞いてくれた。
 笑って、軽口を叩いて、黄色い歓声をあげて。

 オリヴィアには好きな人はいないの?

 そう聞くと、オリヴィアはゆるゆると首を横に振った。


『ううん。生憎、まだ素敵な人とは巡り会ってないの』


 オリヴィアくらい美人で性格も良かったら引く手あまただね。

 笑って言う。
 オリヴィアはぽっと顔を赤くした。


『うふふ、ありがとう、アリア。そんな人が現れたら真っ先にアリアに紹介するわ』


 オリヴィアと釣り合う奴か確かめてあげる!

 大切なオリヴィアを悪い奴なんかに渡すわけにはいかない。
 ふんす、と意気込むと、オリヴィアはおかしそうにクスクスと肩を揺らした。


『アリアが許してくれるような素敵な人を頑張って見つけなきゃね!』


 真っ赤な夕日に照らされるオリヴィアの横顔は、揺れていた。

 明日への不安に。
 将来への希望に。

 死への恐怖に。


『アリア』


 オリヴィアが名前を呼ぶ。


『あたし、アリアの親友で良かった。あなたと出会えて、本当に良かった。……ありがとう、アリア』


 まるで遺言のようだと思った。
 いつものように茶化すことなどできなかった。

 オリヴィアの顔は、声は真剣で、覚悟を決めていたから。


『――わたしもだよ、オリヴィア』


 涙で滲んだ声で囁き返せば、オリヴィアはこちらを向いた。

 立ち止まり、彼女が大きく両手を広げる。
 吸い寄せられように、彼女の肩に顔を埋めた。彼女を力いっぱい抱きしめた。


『大好きよ、アリア』



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