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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第3章 正しいと思う方を



「アリアは?」


 しばらくしてオリヴィアが口を開いた。


「わたし?」

「そう。この世界の巨人を駆逐して、壁もなくなった世界になったらなにがしたい?」

「なにが……したい、か」


 巨人を殺して、自由に壁の外に出て、アルミンに海を見せて、そのあとは?
 改めてなにがしたいかと聞かれるとパッと思い浮かばない。


「うーーん……わたしは……」


 アリアは喫茶店の窓の外を見た。


「わたしは」


 平和な街。笑い合う人々。真っ青な空に、柔らかな日差しを注ぐ太陽。


「静かに平和に暮らしたいなぁ」

「暮らす? 家族と?」

「もちろん家族と一緒に過ごせたらいいけど……もしかしたらさ」


 アリアは身を乗り出し、照れくさそうにちょっと頬を赤くした。

 オリヴィアはその顔を見た瞬間、アリアが今からなにを言おうとしているのかを察した。


「もしかしたらそのときには好きな人とか……いるかもしれないから、その人と過ごしたいなぁ、なんて」

「なにそれなにそれ! 素敵だわ!」


ずずいっ! とアリアに迫ってくるオリヴィアにアリアはあわあわと両手を顔の前で振る。


「もしかしたらの話だからさ! い、今まで男の人と付き合ったこともないし……」

「ねぇねぇどんな人がタイプなの?」

「え、えぇっと」


 タイプ。
 そう聞いてふっ、とある男の顔が降ってくる。

 無愛想で目つきが悪くて、でも優しく表情を緩める――


「いやいやいや!! ないない! ないって!」

「わわっ、急にどうしたの? アリア」

「エッ、あ、ううん! なんでもない!」


 アリアはへらりと笑って、不思議そうなオリヴィアの目から逃れるようにオレンジジュースを飲んだ。


「その反応は……好きな人、いるのね? ふふっ、壁外調査から帰ったら教えてちょうだい!」

「へっ!? な、なんで」

「いいじゃない! 余計に死ねなくなったわ!」

「え、えぇ……」


 困るアリアにオリヴィアはにこにこのまま話を進めていく。
 

「約束ね!」

「はいはい、約束約束」


 アリアは微笑み、小指を差し出すオリヴィアに自分の小指を絡めた。



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