第16章 忌まわしき日
一大イベントを終えた! と清々しそうな様子のアリアはテーブルの上のワイングラスに手を伸ばす。
本当は控えばければならないが、初めて酒を飲んでから今日までアルコールは一度も口にしていない。医務室の先生からも「今日だけ、少量だけ、を守ってくれるのならいいよ」と言われていた。
ほんの少しだけワインを口に含んだアリアはこくんと飲み込む。喉がかすかに上下するのを、リヴァイはぼんやりと眺めていた。
「アリア」
名を呼ぶ。
懐中時計を箱の中に戻し、テーブルの上に置く。
アリアは「どうしました?」とリヴァイを見た。
「ずっと聞きたいことがあったんだが」
アリアの青い瞳はアルコールによって潤んでいる。頬は緩み、目尻は下がり、ずいぶんと間の抜けた表情だった。
特別作戦班の奴らが見たらきっと普段のアリアとの違いで驚くことだろう。
アリアは完全に気を緩めている。
幸福感に身を浸し、今、この瞬間を楽しんでいる。
「リヴァイさん?」
だが、リヴァイはそんな幸せそうなアリアに冷水をかけ、目覚めさせようとしている。リヴァイが聞きたいことは、おそらくアリアにとっては聞かれたくないことだから。
難しい顔で黙ってしまったリヴァイを、アリアが呼んだ。
別に今聞かなくたっていいじゃないか。
この空気を壊してしまうようなことを聞かなくたって。
しかし、今を逃せば次がいつあるかわからない。もしかしたら、リヴァイはその答えを永遠に聞けなくなってしまうことだってあるのだ。
「お前の誕生日はいつなんだ」
息を吸って言葉を吐き出す。
瞬きがひとつあって、アリアの顔が強張るのがわかった。
目を逸らされる。立ち上がろうとするアリアの腕を掴む。
「アリア、教えてくれ」