• テキストサイズ

雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第16章 忌まわしき日



 二人が去った執務室で、アリアとリヴァイは紅茶と茶菓子を前にして、再び他愛もない雑談をしていた。


「ペトラとオルオに初めて会ったときは壁外だったんです。二人とも巨人に襲われて腰を抜かしていて」


 思い出を懐かしみ、アリアは微笑む。


「そんな二人が立派になったなぁ」


 まさか特別作戦班に選ばれるなんて。
 共に戦えるのが本当に待ち遠しい。


「明日からさっそく訓練だ。立体機動中にゲロを撒き散らさねぇといいが」

「兵長の訓練を受けたら誰だってまずはゲロを吐きますよ。わたしもナスヴェッターさんもエルドもグンタも、みんな一回は吐いてたじゃないですか」

「吐いてる最中に気を失ってゲロまみれになったのはナスヴェッターだったな」

「わぁ、ありましたね、そんなことも! 懐かしいなぁ。あのときの兵長のドン引き顔が忘れられませんよ」


 気絶し、自分の吐瀉物に顔を突っ込んだナスヴェッターの姿もなかなかに強烈だったが、それを上回るほどのリヴァイの顔を思い出す。
 ドン引きなんて生やさしいものじゃない。その一件以降、ナスヴェッターはリヴァイが妙によそよそしいと不安にしていた。

 今でこそアリアも訓練中に吐かなくなり、気絶もしなくはなったが、そうなるまでにかなりの慣れが必要だった。

 明日の二人は大丈夫だろうか。







 ──結論から言うと、大丈夫ではなかった。

 リヴァイの言葉は的中し、オルオは立体機動訓練中に吐きながら落下していき、それから数日は悪夢にうなされたらしい。
 一方のペトラは吐くことはなかったが、最後の方には力つき、その場に倒れて夜まで目を覚まさなかった。

 その日からというもの、二人はリヴァイを見るたびに怯えていたとかいなかったとか。






/ 531ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp