第15章 命の優先順位
「だって、オレ、その」
不自然に濁される言葉にアリアは首を傾げる。
トーマンは顔を真っ赤にしたまま目をギュッとつぶった。
「アリアさんのことが好きなんですっ!」
それはよく通る声だった。補給地点全体に響くんじゃないかというくらい。
「えっ」
動き回っていた兵士たちの目がアリアとトーマンを見る。ざわめきが広がる。誰かが「よく言ったぜ新兵!」と声を投げる。
アリアは思わず天を仰いだ。
リヴァイの言葉は正しかった。まさか、本当に恋愛的な好意を寄せられているなんて。
トーマンは潤んだ目でアリアを見た。
「あー、いや、ううん……」
こんなところで告白されるなんて。
まぁいつ死ぬかわからない壁外調査中だから、とも言えるのか?
「……でも、それだけじゃないんです」
息と共にトーマンは言葉を吐き出す。
「アリアさんが死んでしまったら、リヴァイ兵長が悲しむんじゃないかと思って」
「……どうしてそこで兵長が出てくるの?」
あまりにも突然出てきた言葉に思わずアリアは聞き返していた。
リヴァイ兵長たち、ではなく、どうしてリヴァイ一人が悲しむと思ったのか。聞きながら、アリアには答えがなんとなくわかっていた。
「だって、お二人は恋人同士なんですよね?」
トーマンの声は小さかった。まだこちらに注目している兵士たちはいるが、この会話が聞こえてはいないだろう。
「どこでそれを?」
「え、っと、噂です。ただの、噂なんですけど」
それは噂ではなく、トーマンがただ目撃したからなのだが、アリアはそんなこと思いもしない。
「それで、あなたはわたしが兵長の恋人だから助けたって言いたいの?」
「……それも、あります」
アリアは整えた髪をぐしゃぐしゃにかき回してため息をついた。
今朝のリヴァイとの会話を思い出さずにはいられなかった。
アリアの兵士としてのプライドの話を。