第15章 命の優先順位
こんなことで、と笑う人もいるかもしれない。どうして? と疑問に思う人もいるかもしれない。それでも、ここを譲るわけにはいかなかった。
「プライド」
「えぇ」
リヴァイがつぶやく。
予想外の答えだったのだろう。しばらく彼は何も言わなかった。そしてゆっくりとアリアの上から体を引く。
アリアも上半身を起こした。
「そのプライドについて、俺が聞いたら答えてくれるのか?」
さっきまでの「問い詰めてやる」という迫力をどこへ置いてきたのか、こちらを伺うようにリヴァイは言った。
アリアは薄く笑って首を横に振った。
「だめです」
人差し指同士をクロスさせて口の前に掲げる。
リヴァイの顔が不機嫌そうに歪んだ。
「アリア」
「だめです。笑い飛ばされちゃうかもしれないから」
「笑うわけない」
「いつか、教えてあげます」
「いつ」
「う〜ん、もっとわたしが強くなったら?」
「どういうことだ」
「わたしが何もかもを吹っ切れるようになったら、教えますよ」
こんな小さなプライドを、どこかに置いていくことができるくらいになれたら。そのときは言えるかもしれない。
へらりと笑うアリアに、リヴァイはそれ以上何も言ってこなかった。ただ、まだ臍を曲げているのだろう。
アリアの太ももに頭を乗せて寝転んだ。
「あと1時間、寝る」
「この体勢で、ですか?」
アリアの問いかけには答えず、リヴァイは目を閉じてしまった。
アリアは苦笑し、リヴァイの髪を優しく梳く。
やがて、穏やかな寝息が聞こえた。