第15章 命の優先順位
「アリアのために命を使うだなんだと言いながらまとわりつきやがって。昨日の夜だって手を握ろうとしてやがった」
「え、えぇ……」
「お前もお前で楽しそうに相手して、勘違いしちまうだろ」
「そんなつもりは」
ただの可愛い後輩のつもりだった。命を預け合う調査兵団という組織の特徴的に、割と重めの敬愛を向けられることはある。トーマンもまた、そういった相手だと思っていた。
じ、とリヴァイの目線がアリアを見る。
その目の強さに逸らしたくても逸らせなかった。
咄嗟に後ずさろうとしたアリアの腕を、リヴァイが掴んだ。
「男はな、単純なんだ」
あっ、と思ったときには遅かった。
両腕を捕えられ、あっけなくベッドに縫いつけられる。
「リヴァイさん、」
「そういう奴らを遠ざけるためにも恋人がいることを言っておくのは必要だ。そうすれば、あの新兵みてぇに俺の目の前でお前に告白まがいのことをしてくる奴もいなくなる」
「あ、あのときそんなこと考えてたんですか?」
「あぁ」
驚くアリアとは対照的にリヴァイは悪びれもせず頷いた。
とにかく拘束から逃れようと動くが、掴まれた腕はびくとも動かない。足を動かしても、そもそもリヴァイが馬乗りになっているからどうにもできない。
リヴァイは無表情にアリアを見下ろしていた。
「で?」
「えっ」
「で、どうして言いたがらないんだ? 俺とのことを」
振り出しに戻ってしまった。
誤魔化しはできない。大人しく言うべきなのか……いや、でも。
「……わたしの、プライドなんです。ちっぽけではあるけど、調査兵団としての。人類に心臓を捧げたせめてもの」
やがて、アリアは小さな声で言った。リヴァイから顔を逸らし、目を閉じる。
そう、これはアリアの個人的な問題だった。