第15章 命の優先順位
「まだ寝ていたらどうですか? 日も昇っていませんし」
「ならお前も寝ろ」
「もう髪も結んじゃいました」
「だからってなんでこんな朝早くに起きてるんだ?」
立ち上がり、リヴァイの隣に腰掛ける。ベッドがわずかに軋んだ。
「みんなが起きるより前にここを出ないといけないので」
ここは幹部の棟で、アリアの部屋からそれなりの距離がある。そんな距離を皆が起きたころに移動はできない。アリアとリヴァイが恋人同士であることを知っている人間は限られているのだ。
リヴァイはムッとしたように眉間に皺を寄せた。
「知られるのが嫌なのか?」
「う〜ん……」
「兵団内の恋愛は禁止なんて規律はないだろ」
「それは、そうなんですけど……」
困った顔をしてアリアは言葉を濁す。
アリアがリヴァイと付き合っていることを大っぴらにしていないのにはもちろん理由があった。だがそれを正直に伝えていいものか、と悩んでしまう。
「アリア」
教えろ、というようにリヴァイはアリアの脇腹を突ついた。
「逆に、リヴァイさんはこうして付き合っていることを言いたいんですか?」
「当たり前だ」
間髪入れずに返ってきた返事にアリアは思わず笑った。
まさかここまでの速度で返答されるとは思っていなかった。
「理由を聞いても?」
「……お前はモテるだろ」
ぽつ、とこぼされた言葉。アリアはリヴァイの横顔を見た。
「わたしが?」
「あぁ。気づいてねぇのか?」
「まさか、そんなこと」
「ある。最近でいうとあいつだ。あの新兵」
「もしかしてトーマンのことですか?」
アリアの驚いた声にリヴァイは当然、とでも言いたげに頷いた。
アリアは顎に手を置いて考え込む。
トーマンが? そんな素振り、全く気づかなかった。ただ純粋に上官として尊敬されているとばかり思っていたのに。