第3章 正しいと思う方を
「んん〜! おいひい!」
「ね〜!」
アリアとオリヴィアは頬に手を当てて表情をふにゃんふにゃんにしていた。
2人は最近街にできたというパンケーキ屋に来ている。
話題になっていたパンケーキを食べに来た、というより明日の壁外調査の緊張を和らげるためだ。
「それでね、そのときアルミンが――」
「うふふっ、あたし、アリアの弟に会ってみたいわ」
「今度来てよ! きっとアルミンも喜ぶから」
カラン、とオレンジジュースの氷が音を立てて崩れる。
アリアとオリヴィアはわざと目を合わせないようにパンケーキを頬張った。
今日1日、買い物をしたり美味しいものを食べたりし、遊んでいたが、その間にはどこか緊張したような空気が流れていた。
「…………ねぇ、アリア」
ごくんっ、とパンケーキの最後の一口を食べ終わったオリヴィアが口を開いた。
「なに?」
わざと声のトーンが下がらないようにし、フォークとナイフを置く。
「…………明日さ、壁外調査ね」
アリアは意を決してオリヴィアの目を見た。
「うん、そうだね」
オリヴィアはテーブルの上で手を組み、落ち着かなさそうに親指をくるくると回す。
本当はずっとこの話をしようとしていた。
アリアもオリヴィアもお出かけを楽しんではいたが、心のどこかでは壁外調査のことが気にかかっていたのだ。
「アリアはやっぱり……緊張する?」
「そりゃするよ。初めてだし、訓練をしたとはいえ不安だし」
「そうよね」
「オリヴィアもでしょ?」
「……もちろんよ。とても怖いわ。あたしは…………死にたくない」
オリヴィアはぎゅっと目をつむり、声を震わせた。