第15章 命の優先順位
思わずアリアは頬をかいた。
あれだけ真っ直ぐな熱意を向けられるのには慣れていない。だが悪い気はしなかった。
穏やかに微笑むアリアとは対照的に、エルドとグンタはなんとも言えない表情になっていた。
「俺たちの方がアリアさんといる時間は長いのに」
「全くだ。たかが新兵如きがアリアさんの隣にいられると思ったら大間違いだぜ」
「ちょ、ちょっと二人とも、なんでそんなこと……」
明らかにトーマンへ敵意を持っている言葉に慌ててアリアは止めた。
「だってあいつ、最近ことあるごとにアリアさんに話しかけに行ってるじゃないですか! きっとアリアさんに気に入られようって魂胆なんですよ」
「アリアさんは俺たちの上官なのに! 兵長、あいつになんとか言ってやってくださいよ!」
やいのやいのと騒ぐ二人に、今まで黙っていたリヴァイが口を開いた。
リヴァイならきっと二人を宥めてくれるだろうと思ったアリアは、困ったように眉を下げてリヴァイを見る。
「アリアとの付き合いは俺が一番長い」
「へ、兵長……?」
予想だにしていなかった言葉が飛び出してきて、アリアは一瞬混乱する。だが当のリヴァイは至極真面目な顔つきだった。
「それはずるいですよ兵長!」
「兵長と俺たちじゃ年数が違いすぎるじゃないですか!」
「悔しかったらもっと早くに生まれてくるんだったな」
「いや、あの……付き合いで言えばエルヴィン団長とハンジ分隊長の方が長いと思うんですけど……」
リヴァイは無言でアリアを見た。間髪入れずに軽い蹴りがアリアの脛に飛んでくる。
「いっ!!」
「正論は受けつけてない」
「そんな無茶な……」
正しいことを言っただけなのに。
蹴られた脛をもう片方の足でさすり、アリアは残っていた芋を口に入れた。ちらりと見ると、トーマンはすでに同期に囲まれて昼食を食べているところだった。