第15章 命の優先順位
「俺も知らねぇな」
真正面から突き刺さるリヴァイからの目線に、思わず顔を逸らした。
なんて答えるべきか一瞬悩み、そして誤魔化すようにへらりと笑った。
「内緒」
「ええ! なんでですか!」
「俺たちにも祝わせてくださいよ〜!」
「……あれだけ俺の誕生日は祝いたがったくせに自分は言わねぇのか」
「いろいろ事情があるんですよ」
芋をひとくち、口に放り込む。
「団長に聞けばわかるんじゃないかな! 団員の個人情報が書かれた紙は団長が持ってるらしいし」
「いや、団長は……」
「話すのさえ畏れ多いですよ」
「聞きに行くか」
「兵長」
がた、と立ち上がりかけたリヴァイをアリアの声が止まる。アリアはかたい表情でリヴァイを見た。
「……わかった」
リヴァイは息を吐くと、おとなしく椅子に座った。
少し淀んだ空気が流れる。アリアは思わず「なんだかごめんね」と言った。
だが、知られたくなかった。
いや。知られたくない、とは少し違うか。
アリアは言いたくなかったのだ。自分の誕生日を口にするのさえためらってしまうほどに、彼女はその日を心底嫌っていた。
「アリアさん!」
苦い空気を切り裂くように、ハツラツとした声が食堂に響いた。
驚いて声の方を見ると、そこにはトーマンがいた。キラキラと目を輝かせてアリアに手を振っている。アリアは小さく笑うと手を振り返した。
「あいつ……」
それを見ていたエルドがどこか苦々しげに言った。
「結構噂になってるよなぁ」
それに同意するように、腕を組んで鋭い目をしたグンタが頷いた。
「そうなの?」
「あいつがアリアさんに自分の命を捧げるとかなんとか言ってるの、見てた奴が何人かいて」
「なかなか熱意のある新兵だなって言われてるんです」
「……あれ聞かれてたんだ。ちょっと恥ずかしいなぁ」