第15章 命の優先順位
アリアの前にリヴァイが座り、それぞれが無言で食べ始めた。
リヴァイが静かなのは通常通りだが、アリアとエルドとグンタが黙るのは珍しいことだった。いつもなら賑やかなくらい話すのだが。
水を飲み、まずはスープに手をつける。いつもと変わらない薄味のスープのはずだが、汗をかきすぎたせいだろうか。塩味が全身に染み渡った。
「そうだ、エルド」
ふとグンタが何かを思い出したように顔を上げた。彼はちょうどパンを口いっぱいに頬張っていた。
グンタの隣に座っていたリヴァイが何も言わず目線を動かす。
グンタはコクコクと頷いて、全部を飲み込んでから改めて口を開いた。
「お前、そろそろ誕生日なんだろ」
言いながらグンタは自分のフルーツをエルドの方へ押した。
アリアとリヴァイは揃ってエルドを見る。彼は驚いたような表情をしてから照れたように笑った。
「よく覚えてたな」
「これ、俺からのプレゼントな」
エルドは笑いながら差し出されたフルーツを手にした。
「じゃあわたしもっ!」
アリアはめりっとパンを半分に割るとエルドの皿に乗せた。リヴァイは「おめでとう」と言いながら蒸した芋を丸々エルドに渡した。
途端にエルドのトレイの上が賑やかになった。
「アリアさん、兵長、ありがとうございます!」
「何歳になるの?」
「ええっと、今年で18になります」
「若ぇな」
しみじみとリヴァイが言う。それを聞きながら、アリアは自分の年齢を振り返った。
(今度の誕生日で……ちょうど20歳か)
調査兵団に入団してから約5年。死にかけたことが何度もあった。次の誕生日を迎えられる保証もない。それでもよく生き残ってきたなと思わずにはいられなかった。
「そういえば、アリアさんのお誕生日っていつなんですか?」
むしゃむしゃとパンを頬張りながらエルドが言った。まさか聞かれるとは思っていなかったアリアは「え」と言葉に詰まる。