第15章 命の優先順位
「昼……メシ……?」
数歩後ろから呟く声が聞こえる。振り返ると、まだ完全には意識を取り戻していないらしいグンタがいた。
「今からお昼ご飯だよ」
「おひる……」
「食べないと午後からの訓練もついていけなくなるよ」
「今メシ食ったら全部吐く自信があります」
「わかる」
あまりにも満身創痍だったため、アリアは思わずグンタに肩を貸した。前方ではエルドがリヴァイに引きずられている。そろそろ目覚めないとリヴァイに捨てられそうだ。
「エルド〜」
さすがにグンタとエルドを抱えて歩ける気がしない。思わず声をかける。う、と唇が動いて呻き声が漏れたのを見た。たぶんもうすぐ起きるはずだ。
なんとか食堂にたどり着いたアリアたちは崩れるように椅子に座り込んだ。ぐしゃ、とテーブルに突っ伏す。
全員、一言も発しなかった。
体中の筋肉が震え、重さが増す。まるで重力に押しつぶされているような感覚だった。食堂の中にはスープの良い匂いがしたがそれでも空腹は覚えなかった。早朝から動き回っていたから腹は減っているはずなのに。
「チッ、仕方ねぇな」
そんなアリアたちの様子を見ていたリヴァイがため息をつくと、くるりと背を向けて食事を取りに行った。
その背中を眺めながら「わたしも、動かないと」と呟く。だがどうにも体は言うことを聞かなかった。
「おいお前ら、起きろ」
上から声が降ってくる。
のろのろと声の方を見上げると、仏頂面のリヴァイが食事の乗ったトレイを4つ持って立っていた。4つ?? 人間には腕が2本しかないのにどうして4つも持てるのだろう。
「兵長……」
「昼食を取ってきてやったから起きろ」
「「「兵長〜〜〜!!!」」」
アリアたちはガバッと勢いよく上半身を起こす。
「ありがとうございます、兵長」
「まじ感謝っす兵長」
「兵長、一生ついて行きます」
「おう」
目の前にトレイが置かれる。
今日のメニューはパンと野菜スープと蒸した芋。その上フルーツまでついている。アリアはパッと顔を輝かせた。