第15章 命の優先順位
アリアも地面に寝転びたくなるのを必死にこらえ、よろよろと立ち上がった。周りで同じように訓練をしている兵士の目線が痛い。明らかにドン引きしているのがわかった。
あれだけハードな訓練をしていたのにまだ昼になったばかりだなんて。
「アリア」
「おわっ」
リヴァイに呼びかけられ、アリアの方へタオルが放り投げられた。慌ててキャッチする。
「とりあえず拭け」
「あっ、すみません」
汗だくで見苦しいのだろう。リヴァイはどこか苦々しい表情をしていた。
「あとジャケットを着ろ」
「え、流石に今着たら暑さで……」
「いいから」
舌打ちをしたリヴァイはずかずかと近づいてくると投げ捨てられたジャケットを拾って、アリアにかけた。
思わずリヴァイを見上げる。
「下着が透けてる」
小さな声でリヴァイが言った。
パッと自分の服装を見下ろす。白いシャツを着ていた上に水をかけたのと汗のせいで確かに下着が透けていた。
「わっ」
急いでジャケットを着て、ぎゅっと前を閉じる。
「ちゃんとしろ」
「スミマセン」
肩を縮めて言う。いくらなんでも恥ずかしすぎる。
リヴァイは息を吐くと乱雑にアリアの頭を撫でた。
「グンタ、起きろ。エルド! 汚ねぇぞ!」
そのまま乱暴にグンタを担ぎ起こし、エルドの首根っこを掴んでひっぱり立たせる。二人とも完全に死んだ目をしていた。
「昼飯の時間だ」
脱力したエルドを掴んだままリヴァイは言った。
そのとき、昼を知らせる鐘が鳴った。
「お昼ごはん、食べられるかなぁ」
重たい体を引きずりながら食堂を目指す。空腹は感じているものの水以外のものを受け入れられる自信がない。
しかし昼食はしっかり食べなければいけない。午後からもこの訓練が続くのだから。