第15章 命の優先順位
アリアは耐えきれず、ついにその場に膝をついた。全身がガクガクと震え、肺が激しく動いている。目の奥が白み、大きく開いた口からは涎が溢れていた。
隣ではグンタは水袋を持ったまま大の字に寝ている。呻き声を出すだけでぴくりとも動かない。
アリアは荒い呼吸を繰り返しながら目の前に立つリヴァイを見上げた。彼はこの暑さに少しだけ汗をかいているものの、息切れひとつしていない。
(に、人間じゃない……)
遠くでエルドが吐く音が聞こえた。
アリアたちは早朝からリヴァイの指導のもと、訓練を行なっていた。
グラウンドを一時間走り続け(もちろん歩くこともスピードを緩めることも許されない)、5分の休憩をしてから今度は馬に乗って長距離を走った。常に速力を保ち、山を登って坂を下った。
それが終わるころにはエルドとグンタはほとんど気を失っていた。アリアだけが辛うじて意識を保っている状態だった。
しかし! まだ訓練は終わらなかった。
最後は立体機動を用いてリヴァイとの鬼ごっこだ。広い訓練場を飛び回るリヴァイを追いかけてタッチする。言葉にすると単純だが内容はハードすぎた。
体力が余っている上立体機動の扱いに誰よりも長けているリヴァイを相手にするのだ。全く捕まらなかった。最後の方はお情けで捕まえさせてくれたのが少し悔しい。
が、あのまま鬼ごっこが続いていたらどうなっていたかわからない。
汗だくのアリアはジャケットを脱ぎ捨て、水袋をかたむけ、頭から水をかぶった。暑すぎる。息が整うまでかなりの時間が必要そうだった。
「グンタ、生きてる?」
あまりにも身動きをしないグンタに声をかけると、投げ出された指先が僅かに動いた。
「エルドは……」
吐くものがなくなったらしいエルドはついに地面に突っ伏していた。
あれはダメだ。