第14章 目に傷のある馬
リヴァイが自分のために見せたい景色がある。
その事実だけでアリアの心はほかほかとあたたまった。喜びと、幸せに満ちていく。
なんて単純な人間なんだろうとも思うが、相手がリヴァイなのだから仕方ない。
「えへへ」
「そんなに楽しみか?」
「はい!」
きっと何年経ってもこの気持ちが消えることはないのだろう。
アリアの中で、リヴァイの存在はあまりにも大きなものになっていた。なにがあってもずっとそばにいたいと思える相手は初めてだったから。
アリアは大きな口でパンを頬張る。
そして、そういえば、と目線を上げた。
「もうすぐ新兵が入ってくる時期ですね」
「あぁ、もうそんな時期か」
3週間後に入団式が行われる予定だった。
エルヴィンはここ最近ばたばたと忙しそうにしていたし、分隊長や班長の面々も難しい顔をして集まっているのも何度か見かけていた。今年はどれくらい入ってくれるだろうか。
「リヴァイ班目当てで入ってくる子もいたりして!」
その可能性も否定はできない。
近ごろ特別作戦班は名が知られるようになっている上、リヴァイ兵士長のカッコ良さに気づく人間も増えてきた。
「いたとしても新兵を入れるつもりはねぇよ」
「そりゃあもちろん」
リヴァイ並の兵士でなければ新兵でいきなり特別作戦班入りなんてできるはずがないだろう。
しかし問題はそこではない!
「わたしとしてはリヴァイさんのカッコ良さに惹かれて来る子もいるんじゃないかと思っていてですね……」
もしファンクラブなんかできてしまったらどうしよう。恋人としても兵士長の右腕(自称)としても、由々しき事態だ。できてないほうがおかしいんだから!
「いるとは思えねぇな。こんな無愛想な男に寄ってくる奴なんざ」
「それをわたしの目の前で言います?」
じとっ、と見上げるとリヴァイは目を細めて笑った。
「ごちそうさま」
空っぽになった食器を持ってリヴァイが立ち上がる。
「洗い物しとくので置いといてください」
「いいのか?」
「はい!」
なにかを考えるように目を伏せたリヴァイはゆっくりとまぶたを持ち上げた。
「ピクニック、楽しみにしてる」