第14章 目に傷のある馬
やはり無難に卵だろうか。あとはレタスと……トマト! 塩をしっかりかけると本当に美味しくなるのだ。
火にかけた湯に卵を3つ入れる。だいたい9分くらい待てばちょうどいい具合のゆで卵になるだろう。
レタスをむき、数枚を水で洗う。軽く水気を切ってちぎる。トマトはひとつで充分だ。薄く切る。包丁の切れ味が悪く、何枚かは潰れてしまったがまぁ許容範囲だから大丈夫。
そうこうしているうちにパンは焼け、ゆで卵が完成した。
(昔、ピクニックに行ったときはサンドウィッチだけじゃなくてクッキーも持って行った気がする。手作り……いや、母さんが知り合いから貰ったきてたやつだ。おいしかったなぁ、また食べたいや)
冷水をかけながら卵の殻を剥く。割れ目に親指をかけ、少し力を入れれば殻はするりと身から離れた。
幼いときは殻を剥くのが本当に苦手だった。
何度やっても中身が引っついて、母のつるんと綺麗な卵とは対照的にデコボコの多い卵になってしまっていた。
(それが今や……)
朝の光にかざしてしげしげと眺める。
「きれいだね」
微笑んで卵に囁く。
剥いた卵をボウルに入れ、塩胡椒を振りかける。
市販のものはなかなか手に入らないマヨネーズは手作りをした。王都に行けば買えるだろうが、生憎そんな時間はなかった。
潰した卵にマヨネーズを加え、よく混ぜる。味見をして、しっかり味がついていることを確認する。
ちょうど良い分量になるように、焼けたパン2枚の表面に卵を広げる。その上にトマトを乗せて塩をよく振りかける(高級品だからこればかりは厨房から拝借した)。あとはレタスを乗せて完成だ。
上からパンを重ねて、紙で包む。斜めに包丁を入れたら断面の美しいサンドウィッチのできあがり。
「我ながら良い出来じゃん」