第13章 呆れるほどおめでたい世界
静寂。
ハンジとモブリットが巨人に近づき、きちんと固定されているかを確認する。
その場にいる全員が固唾を飲む中、ハンジは緑の信煙弾を撃ち上げた。作戦成功の合図だ。
息を吐く。成功した。巨人の、捕獲に。
ドッと歓声が湧いた。ニファは飛び跳ね、グンタとエルドは拳を突き上げる。ペトラとオルオが木の上から降りてくるのが見えた。
ガッツポーズをしたハンジは喜びを噛み締めるように頷き、モブリットと顔を見合わせ抱擁していた。
「アリア」
突然の歓声に驚くグリュックをなだめていると、近くから声が聞こえた。
「リヴァイ兵長!」
まだ巨人の血がついているブレードをハンカチで拭いながらリヴァイが近づいて来る。アリアはグリュックから降りると、パッと笑った。
「囮役、よくやった」
「ありがとうございます! 兵長もさすがでした! かなりのスピードで走ってた巨人の腱を削ぐなんてやっぱりすごいです!」
アリアの言葉にリヴァイはわずかに口角を上げた。
「怪我はないか」
「はい! 平気です!」
ハプニングはあったものの、かすり傷ひとつ負っていない。
くるりとその場で回転してみせる。
「そうだ、聞いてください! わたし、さっきひとりで巨人を倒したんです! 標的の後ろに隠れてたみたいで、バッて飛び出してきてギリギリのところでズバッ! と!」
身振り手振りでさっきの状況を説明する。
この頑張りをだれかに聞いてほしかった。
リヴァイは口角を上げたまま頷き、アリアの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「よくやった」
「えへへ、ありがとうございます! ちょっとほかのみんなにも言ってきます!」
リヴァイに頭を下げると、アリアはグリュックを引いてペトラとオルオの元へ向かった。二人もアリアのほうに興奮気味に駆け寄ってくる。