第3章 正しいと思う方を
「助かりました! ボックさん!」
「いやいや、このくらいなんてことないって」
アリアはボックに取ってもらった本を持ち、深く頭を下げた。
「背が高いっていいですね」
手を伸ばしてもかすりもしなかった場所をボックは背伸びもせずに取ってくれた。
見上げなければならないくらいの身長のボックを羨むと、彼は歯を見せて笑う。
「たしかに高いとこの物を取るときは便利だな。でもよくドアの上に頭ぶつけるときもある。ありゃ痛いぜ」
「へぇー……背が高い人には高いなりの苦労があるんですね」
「そーいうこと。立体機動のときも小回りはできないけどリーチが長いから小柄な人と比べるとそれほど巨人と接近せずに戦える」
「そんな便利なことも!!」
「ははっ。ま、地下街から来たっていうリヴァイは小柄でも俺なんかよりも腕が立つ。あんまり身長なんて気にしないほうがいいと思うぜ」
「なるほど……」
ボックはアリアの肩に手を乗せ、軽く微笑んだ。
「次の壁外調査まであと1週間だがあまり気負いすぎるなよ。行って帰ることだけを考えろ」
「……あ、あの」
アリアはハッとあることを思いつき、ボックを見上げた。ボックは一瞬驚いた顔をして、すぐに「なんだ?」と首を傾げた。
「実は……わたしの親友のオリヴィアとさっきまで長距離索敵陣形について勉強してて」
「ふむ」
「でもあまりにも覚えられなくて、ボックさん、教えてくださいませんか!?」
厚かましいとは思うが、ぐっと身を乗り出して願う。
ボックはちょっと悩んだあと、笑って頷いた。
「任せな」