第3章 正しいと思う方を
アリアはさっきまで読んでいた本を閉じ、席を立ち上がった。
「気分転換にほかの本持ってくるね」
「なんかおもしろいクイズの本持ってきて〜」
「はーい」
オリヴィアに手を振り、アリアは少し遠くの本棚へ向かう。
今まで現れた巨人や奇行種のことについて記された本を元に戻し、オリヴィアからリクエストされたクイズの本を探しに行った。
クイズの本はたしかここより離れたところにあるはず。
「えーっと……」
この前たまたま見かけた本がとてもおもしろかった。あれならオリヴィアも気に入ってくれるだろう。
「うわ……前借りたのだれ……」
アリアは顔をしかめる。
自分の背では届きそうにない場所にその本はしまってあった。
言っても仕方のない文句を以前借りただれかに呟き、アリアは試しに背伸びをして精一杯腕を伸ばす。
しかし届くはずもなく。
アリアは近くに台がないかを探した。
「…………最悪」
アリアの見える範囲にはどこにもない。
オリヴィアには申し訳ないが諦めるしか……。
「よっ、なにかお困りかな? お嬢さん」
代わりの本を探そうと本棚に背を向けたアリアの前に軽やかな口調で現れたのはボックだった。
「ボックさん! こんにちは」
「はい、こんにちは。それでどうしたんだ?」
訓練を終え、シャワーを浴びてきたのかボックからは微かに石鹸の香りがする。
アリアはボックの背と本棚を見比べた。
「あの、ボックさん。お願いがあるのですが……」