第13章 呆れるほどおめでたい世界
「口開けろ」
「へ」
隣に座っていたリヴァイの突然の言葉に、一瞬反応が遅れる。間抜けに開いた口にフォークが突っ込まれた。
「むぐっ、」
途端に口の中に甘さが広がる。滑らかなクリームの舌触りに、鼻から抜ける栗の香ばしさ。
「栗、好きだっただろ」
リヴァイのモンブランをひと口頂いてしまったらしい。
どこか得意そうに言うリヴァイに、アリアはこくこくと頷いた。
アリアはさつまいもの他に栗も好きだった。
最近はしていないが、幼いころは近くの栗の木の下でひたすら栗拾いをしていた。茹でるのも良いし、パンに練り込むのも美味しい。
そんなことを少し前にリヴァイに話していた。
覚えていてくれたなんて。
自然と頬が緩み、モンブランを飲み込む。
「ありがとうございます。とっても美味しいです」
リヴァイは満足そうに口角を上げると、「もうひと口いるか?」と首を傾けた。
「いえ。これ以上はやめときます」
彼のおかげで甘いものを食べたい欲は満たされた。なにより些細な会話をリヴァイが覚えてくれていたという事実に、アリアは幸せな気持ちになっていた。
「相変わらずリヴァイはアリアのことが好きなんだねぇ」
「当たり前だろ」
「いいことじゃないか」
「今度栗拾いに行く約束をしている」
「えっ、そうなの? いいなー! 楽しそう!」
「久しぶりにむき栗が食べたいな」
「いいね! 私も食べたい!」
「ならたくさん取ってきますね!」
「頼んだよ〜! アリア!」