第13章 呆れるほどおめでたい世界
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「……と、いうわけなのですが、どうでしょうか」
茶葉の入ったポットを揺らす。
どのケーキにしようか悩んでいたハンジはちらりとエルヴィンを見たあと頷いた。
「私は構わないよ。あとはミケがなんて言うかだけど」
「ミケ分隊長からは許可をいただきました! ハンジさんが良いなら良いと」
ハンジは悩みに悩み、フルーツタルトを選んだ。
その横でエルヴィンが手を出し、チーズケーキを取る。必然的にリヴァイはモンブランを自分の方に引き寄せた。
ケーキパーティーがもうすぐ開催されようとしていた。
「なら決定だ。その2人の見学を許可しよう」
「ありがとうございます! 2人も喜びます!」
エルヴィンが持ってきたティーカップに紅茶を注ぐ。
ふわりと良い香りが部屋に広がった。
「慕われてるんだな、アリア」
紅茶をひと口飲んだエルヴィンが穏やかに言う。
「ありがたい限りです」
どちらかというとオルオはリヴァイと話したがっていたようだったが。しかし後輩から慕われるというのも悪い気はしない。
アリアは微笑み、カップを手にした。
「アリアはケーキ食べないの?」
いつの間にかタルトを半分食べていたハンジがふと思い出したように言った。
「甘いものは控えるように言われてて……」
以前、訓練兵団へ説明会に行った夜、調子に乗ってチョコレートをたくさん食べたことを思い出す。あのあと、結局体調が悪くなって医務室の先生にバレ、こってりと怒られてしまったのだ。
遠い目をして苦笑する。あのときの先生は本当に怖かった……。
「ひと口くらいならいいんじゃないか?」
同じことを思い出しているのか、エルヴィンが笑う。
「でも……」
もちろんアリアだって食べられるのならケーキを食べたい。このパーティーに正々堂々参加したい。だがまた怒られたら、と思うとなかなか踏み出せなかった。
「アリア」
そのとき、不意にリヴァイに名前を呼ばれた。