第3章 正しいと思う方を
「……長距離索敵陣形…………」
「うっ、その言葉もう聞きたくないわ」
だらり、とアリアは図書室の机に伸びた。
アリアの発した言葉にペンを握り、紙に向かっていたオリヴィアが悲痛な声を出した。
2人の頭を占めているのは、次の壁外調査で使用される陣形のことである。
従来であればただ突き進み、巨人と遭遇すれば即戦闘、というものだった。だが今回から使用される長距離索敵陣形はエルヴィン・スミス考案のものだ。
信煙弾を色で分け、巨人を発見次第赤色の信煙弾を撃ち上げる。それを見た団長が緑色の信煙弾で陣形の行き先を指示するのだ。その後、全隊に方角を知らせるために皆が進路に向けて緑色の信煙弾を撃つ。
この陣形は巨人と戦うことではなく、いかに巨人と接敵しないかを目的としていた。
文字にすれば単純だがそのほかにも陣形の配置を覚えなければならない。
「……ややこしすぎるのよ」
ついにオリヴィアはペンを放り出した。
パラパラと適当に本をめくっていたアリアはオリヴィアの書いていた紙を覗き込んだ。
「あ、もしかしてこれハンジさん?」
「せーかい!」
勉強をしているのかと思っていたが、そこにはたくさんの落書きがされていた。その中に見知った顔があり、指さすとオリヴィアは頷いた。
「これが副官のモブリットさんで、このおかっぱさんが二ファさん。こっちがケイジさん、それでこのゴーグルさんがアーベルさん。みんなとっても優しいの」
「へぇー! ハンジさんとモブリットさんしか見たことないけどそっくり!」
「うふふ、でしょ?」
アリアに褒められたオリヴィアは嬉しそうにクスッと笑った。