第3章 正しいと思う方を
「なにか探していたのか?」
「あ、えっと……地下街から来たっていうリヴァイさんの立体機動をさっき見て、それですごいなって思ったのでもう一度見られないかと……」
「あー、あれな。たしかにすごい。あんま大声じゃ言えないけど調査兵のベテランより優れてるよ、アイツ」
「重力なんて感じさせない飛び方で、翼が生えてるってああいうのを言うんだなって思って、すごいですよね!」
ランゲがちょっと驚いたように片眉をあげる。
アリアは頬を赤くして口ごもった。
「あ、いや……すみません。地下街の人間をこんな風に賞賛するなんて……」
「いや、たしかにアリアの言う通りだ」
3重の壁の最も奥に位置するウォール・シーナ。その地下にある地下街。そこに住む人間は無条件に見下され、差別される人間だった。
その人間を褒めたり、擁護したりする言動は地上ではしてはならないと暗黙の了解があるのだ。
もごもごするアリアの前でランゲは目を細めた。
「リヴァイの腕は調査兵団1だとアタシは思ってる。そしてそれを褒め、憧れたりすることを悪いとは思わない。兵士として当然のことだ」
「……ありがとう、ございます」
アリアが小さく礼を言うと、ランゲは笑い、グリップを握った。
「さ、憧れに少しでも近づくためにアタシたちも訓練しようじゃないか」
「はい!」
アリアは頷き、宙を舞ったランゲを追いかけた。