第12章 キャラメルの包み紙をポケットに入れる
声は震えてはいなかった。
それがアリアへ自信を与える。
「この班は第12代団長が退くと同時に作られました。調査兵団の中でも少数精鋭を集めた班です。リヴァイ兵士長を班長とし、どの分隊にも属しません。壁外調査においては、陣形崩壊を招く事態が起こった場合に増援として最前線で巨人と戦闘を行います」
一旦言葉を区切る。
アリアの脳裏にナスヴェッターたちを失った記憶が蘇る。救えなかったフローラの顔が蘇る。後悔が胸を刺す。彼らの遺体は今も冷たい地面の下だ。
「当然、死亡する確率が最も高い班でもあります。ベテランの兵士であった仲間を二人、失いました。ほとんど平地で大勢の巨人を相手に雨の中戦ったのです」
手がかすかに震えた。
だめだ。感情を露わにしてはいけない。落ち着いて、冷静な心で、公平に。
「そのときにわたしも負傷しました。腕とあばらの骨を折り、内臓を潰されました。わたしの胃は半分もありません」
ざわめきが広がる。なんてことないような顔で立っているこの兵士が、そんな大怪我をしたようには見えないのだろう。
「そして現在、特別作戦班は新たなメンバーを選抜し、次の壁外調査に向けて訓練を続けています。皆さんもご存知の通り、リヴァイ兵士長はとても優れた兵士です。その強さは一個旅団並みとも言われており、その訓練も当然厳しいものです」
あまりの厳しさに吐いたことが何度もあった。
それでも耐えた。地面を這ってでも食らいついた。少しでも強くなるために。
「ですがわたしは、わたしたち特別作戦班は、彼こそが巨人を殲滅するための希望だと信じています。調査兵団は変化しています。新たな作戦が考案され、死者数を格段に減らしている」
アリアは息を吐いた。まぶたを伏せ、そして強い瞳で前を見据えた。
「我々は巨人に対抗し得るだけの力を蓄えている途中なのです」
だから、どうか。
「調査兵団を信じてください」