第3章 正しいと思う方を
「……ねぇ、どうしたら仲良くできる?」
グリュックの鼻を撫でながら囁くと、彼は興味なさそうに牧草を咀嚼し続けた。
仲良くなるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「今日はありがとう、イザベル」
ため息を吐き、イザベルを振り返る。
イザベルは気にするな、というように首を横に振った。
「こんなことならいつでも力になってやるよ! でも今日はおれ、ろくなことできてねーしなぁ……」
「そんなことないよ。壁外調査で死ななければいいってイザベルに言われて気づかされたし」
「そーか? ならいいか!」
「ふふっ。うん、それでいいの」
アリアとイザベルはグリュックと愛馬を厩舎に戻すとぐっと大きく伸びをした。
「じゃあわたしはこれから立体機動の訓練だから」
「そっか! じゃーなアリア!」
アリアはイザベルに手を振り、用意していた立体機動装置を身につけた。手入れを欠かさず行っているおかげで今日もどこにも不備はない。
軽く準備体操をし、アリアは立体機動訓練場へと急いだ。
(リヴァイ……さん、もう訓練終わったのかな?)
またあの立体機動を見てみたい、とそわそわしながらアリアは空を見渡した。
しかし華麗な飛び回る姿はどこにもない。もう訓練を終えたか、それとも奥のほうで飛んでいるか。
「アリア!」
名前を呼ばれ、アリアは声の主を探す。
「ランゲさん!」
たったっ、とこちらへ駆けてくるのは黒髪をポニーテールにしたランゲだ。
ランゲも今から訓練なのか、腰には立体機動装置がついていた。