第12章 キャラメルの包み紙をポケットに入れる
「急に来てごめんね。団長からちょっと時間をもらったんだ」
「ううん! 来てくれてうれしいよ!」
本当に心の底からそう思ってくれているのだろう。
アルミンは身振り手振りで嬉しさを表現する。
「みんな、変わりない? キース教官厳しいでしょ?」
「座学はなんとかなってるんだけど立体機動の訓練でいっつもドベになっちゃうんだ」
「アリア! 俺、立体機動の適正訓練のときに装置が壊れてたのにちょっとだけ耐えたんだ!」
「私はいつもいちばん。座学はアルミンに教えてもらうことが多いけど、その他の訓練では良い成績を貰ってる。……褒めてほしい」
「みんながんばってるんだね……。姉さんは誇らしいよ!」
涙を拭いながらうんうんと頷く。大変だろうがちゃんとやっていけているのを見て安心した。アルミンの様子を見るにいじめられているようでもないし。
「いつもライナーに助けてもらってるんだ」
そのとき、アルミンが言った。
「ライナー?」
「うん。ほら、彼だよ」
アルミンはひとりの青年を指さす。彼はエレンの隣に立っていて、アリアをじっと見ていた。
「あっ、思い出した」
そしてちいさくつぶやく。
「避難所で俺たちにキャラメルをくれた人、ですよね」
その言葉と共にアリアの記憶の蓋が開いた。
どこかで見たことがあったと思ったら、そうだ。あのときだ。
「あのときは本当にありがとうございました。俺たち、すごく励まされたんです」
にこやかに、爽やかに、彼は言う。感謝を示すように握手を求められる。たたえられたまるで作り物のような笑顔にアリアはかすかな違和感を覚えた。
「あのふたりは、元気?」
「はい。あいつらもいっしょに訓練兵になったんです」
「姉さん、ライナーと知り合いだったの?」
「うん。ちょっとね」
ライナーは振り返り、遠巻きにこちらを見ている2人の姿に呼びかけた。
「アニ! ベルトルト! ちょっとこっち来い!」