第12章 キャラメルの包み紙をポケットに入れる
「君には特別作戦班について説明をしてもらおうと思っている。私が話すより実際にその班に所属している者の話の方が説得力があるだろう?」
「いや……え、でも、なんで」
「特別作戦班の中で君が一番の古株だからだ」
「そ、それならリヴァイ兵長の方が適任では?」
だいたい幹部でもなんでもないアリアが行っても、訓練兵たちからすれば「誰だこいつ」状態だろう。
「残念ながら彼には別件の仕事を任せている。今度の壁外調査についてのね。だからこの説明会に同行はできない」
しかしエルヴィンはアリアがそう言うことを予期していたかのように澱みなく言葉を返してきた。
それでもアリアは必死に頭を回した。なんとかしてこの重役を降りなければ。訓練兵の前で話をする?? どれだけの人数がいると思っているんだ。緊張でろくなことも喋れないに決まってる。もしここで粗相でもしたら調査兵団の看板に泥を塗ることに……!?
「君の弟もちょうど今年から訓練兵になったんだろう?」
そういえば、と言うようにエルヴィンが言う。
「え、あ、はい、そう……ですけど」
「ちょうどいい機会じゃないか。時間を作ってあげるから会ってくるといい」
は、とアリアは固まった。
たしかにここ数ヶ月アルミンたちとは手紙のやり取りしかしていなかった。
前回の壁外調査で負った怪我をあの子たちは心配しているに違いない。最近届いた手紙でも「一度でいいから顔を見たい」と書いてあった。
いい、機会だ。エルヴィンの言う通り。
アリアはちらりと彼を見た。
微笑みはそのままで、だが目は真っ直ぐにアリアを見据えていた。
君に逃げ道などないんだよ、と。
そうだ、この男に対して頭を回すだけ無駄なのだ。知恵比べで勝てるわけがないんだから。
アリアは両手を挙げて降参した。
「わかりました。……頑張ります」
声を振り絞って言う。エルヴィンは笑みを深めて頷いた。
「よろしく頼むよ、アリア」