第11章 生まれてきてくれてありがとう
まぶたの裏に光が滲む。
「リヴァイさん」
アリアの穏やかな声が聞こえる。
心地良さに包まれながらリヴァイは目を開けた。
「アリア、」
「おはようございます、リヴァイさん」
アリアは先に起きていて、のんびりとした表情でリヴァイを見ていた。ベッドの頭の上にあるカーテンを開けたのだろう。朝の光が薄暗い部屋の中に差し込まれていた。
「いま、何時だ」
「ちょうど8時です。もうすぐ朝ごはんの時間ですね」
外は快晴らしい。日の光がアリアを照らし、その髪は美しく輝いていた。白い肌は柔らかく光を散らして一種の芸術品のようだ。
「寒くねぇか」
「ちょっと寒いです」
えへへ、とはにかんだようにアリアは笑う。リヴァイはそんなアリアの手を掴んで自分の布団の中に引きずり込んだ。
弾けたように彼女は笑う。朝から元気なことだ。
「あったかい」
それなりの時間布団から出ていたのか、アリアの体はよく冷えていた。これ以上冷えないようにアリアを抱きしめる。足を絡めて頭ごと包み込む。しばらくもぞもぞと動いていたアリアだったが、やがて落ち着く場所を見つけたのか静かになった。
「体は平気か」
「腰が痛いくらいで、あとは大丈夫です。あ、でもちょっとだるさがあるかも……」
「今日1日なにもしなければすぐに痛みも引く」
「午後から訓練を入れてます」
「休め」
「ペトラとオルオに頼まれてるんです」
「代わりに俺がやる」
ぴた、とアリアは黙った。
なにかを考えているのか、クスッと笑い声が聞こえた。
「きっと驚きますよ、ふたりとも。あのリヴァイ兵長に訓練を見てもらえるんですから」
「かもな」
「……なら、お願いしようかなぁ」
「あぁ。そうしておけ。しっかり休んだほうがいい」
「ふふっ、ありがとうございます」
そうは言ったものの、本当は抱かれたばかりのアリアの姿をほかの人間の目に晒すことがリヴァイには耐えられなかった。わがままを言えば数日はこの部屋にいてほしかった。