第11章 生まれてきてくれてありがとう
彼女はどこまでも幸福そうに微笑んだ。背中に手がまわり、もう一度とキスをねだる。
ずっと触れたかった。だが自分から求めにいくのが怖かった。アリアがそういった欲を見せなかったし、本当に好きな相手との行為をリヴァイ自身が経験したことがなかったからだ。自分がどうなってしまうのかわからなかった。己の感情に従い、アリアを傷つけることだけはしたくない。
ついばみのようなキスを繰り返しながらリヴァイもアリアの背に触れる。手のひらでゆっくりと撫でる。まだ閉じられている唇を舌先でつつけば、恐る恐るといった様子で薄く開かれた。隙間に舌を入れる。そのとき、苦しそうにアリアがうめいた。
「アリア、」
思わず唇を離そうとする。だがそれを止めるように背中にまわった手に力が込められ、アリアはかぷりとリヴァイの口に噛みついた。そしてためらいがちにリヴァイの唇を舐める。
アリアが自分から求めてくれている。
それはリヴァイがずっと欲しかったものだった。
あれほど強靭だった理性は瞬く間に崩れ去り、体中が熱を持ったかのように煮えたぎる。
アリアの体をかき抱き、わずかに口を開ける。驚いて動きを止めたアリアは、しばらくしてさっきのリヴァイの真似をするように舌を伸ばした。
それでいいと伝えたくて彼女の頭を優しく撫でる。丁寧に手入れされた髪はサラサラと指の隙間を通り、落ちていく。
舌を絡めて柔らかく吸うとかすかな息がアリアから漏れた。角度を変え、絡め、吸い、食む。そのうちどちらの唾液なのかわからなくなったものが唇の端を伝った。
それが合図だったかのように二人は同時に離れ、ぼんやりと見つめ合う。アリアは息を切らしながらリヴァイの胸にもたれかかった。
心臓の騒がしさをアリアに知られてしまう。いや、もう今さらか。スマートに、なんてものはリヴァイにはできないことなのだ。
「ベッド、行くぞ」
なけなしの理性を総動員させて立ち上がり、アリアの体を横抱きにする。小さな悲鳴をあげたアリアはやっぱり幸せそうに笑っていた。