第11章 生まれてきてくれてありがとう
⠀部屋に戻るとアリアはソファーの上に三角座りをして待っていた。まだ眠気が取り切れていないのか、ぼんやりと蝋燭の炎を見つめている。
「アリア」
⠀名前を呼ぶと、ハッとしたように瞬きをして彼女の目がリヴァイを見つけた。ふわりと花が咲いたように笑う。その笑顔に導かれるようにして、リヴァイはアリアの隣に腰掛けた。
「当日にお祝いできませんでしたね」
⠀両膝に顔をうずめ、アリアは言う。どこか拗ねたような声色に「悪かった」と咄嗟に謝る。アリアはふくふくと笑った。
「責めてるわけじゃないですよ。みなさんがリヴァイさんをお祝いしたくなる気持ちもわかりますし。あ、でも」
「でも?」
「結構たくさんのお酒を持って行ってましたよね?⠀大丈夫だったんですか?」
⠀アリアの問いにリヴァイはどこか得意そうに口角を上げた。
「全員酔いつぶれてたな」
「やっぱり……というかあれ全部飲んだんですか!?」
「残すのも勿体ないだろ」
「まぁそれはそうなんですけど……。リヴァイさんも飲んだんですよね?⠀その割にはぜんぜん酔ってないように見えます」
「酒は強いほうだ。だが、ここに戻ってくるころにはエルヴィンの野郎も酔ってたな」
「あのエルヴィン団長が……」
⠀とは言いつつも、リヴァイ自身酔っていないと言ったら嘘になる。アルコールは確実に体に回っているし、頭の奥がぼんやりとしているのを感じていた。それでも巨人を討伐しろ!⠀と言われたらだれよりも早く駆けつけられる自信はある。
「明日は二日酔いで大変なことになってそうですね」
⠀想像したのか、アリアは声を出して笑った。つられてリヴァイも喉を鳴らして笑う。あぁ、やはり酔っている。
⠀口を閉じて隣のアリアを見る。穏やかな時間だった。
⠀髪の毛をかけ、あらわになった耳があった。丸く、柔らかそうな耳だ。話をしているうちに緊張がほぐれたのか、ほんのりと赤く色づいていた。
⠀深く考えず、リヴァイは指先でその耳に触れた。