第11章 生まれてきてくれてありがとう
「……リヴァイ、さん?」
とりあえず顔でも洗ってこようとアリアから離れようとしたとき、不意に袖が掴まれた。
毛布の中からもそもそと顔が出てきて、青い瞳が開く。その目はぼんやりとしていてまだ完全に眠りからは覚めていない。リヴァイは思わず微笑んだ。
「遅くなって悪かった。今戻ったところだ」
「よかった」
リヴァイの言葉に、アリアは安堵の声を出した。
「このまま、こなかったらどうしようって、思って」
「待っていてくれてありがとう」
アリアの枕元に腰掛け、そっと頭を撫でた。心地よさそうに目が細められる。このままもうひと眠りしてしまいそうだ。
「眠いだろ。今日はもうこのまま、」
「リヴァイさん」
重たそうにまぶたが開かれて、アリアは首を横に振った。リヴァイが何を言おうとしているのか全てお見通しだ、とでも言いたげに。
「もう、覚悟を決めてきました」
彼女は強く言い切った。しかしその瞳はどこか不安そうに揺れている。
リヴァイは一瞬息を止め、やがてゆっくりと頷いた。
アリアの覚悟を無駄にするわけにはいかない。きっと全てが怖いはずだ。それなのにアリアはその身をこちらに委ねると決めてくれた。
「わかった」
ならばそれに応えなくてはならない。