第11章 生まれてきてくれてありがとう
リヴァイは深く長い息を吐くと、アリアの体を抱き寄せた。アリアは「わっ」と小さな声を上げながらリヴァイの中にすっぽりと収まった。
「ありがとうな」
その声は安堵で震えていた。
緊張していたのか、あのリヴァイ兵長が。
「何か、準備しておくことって、ありますか。わたしこういうの初めてで」
そろそろとリヴァイの背中に両手を回す。
なぜかさらに強く抱きしめられた。
「何もしなくていい。怖い思いはさせない。安心しろ」
「うふふっ、信頼してますよ。リヴァイさん」
心臓が高鳴っていた。
全てが未知のことで、明日、どんなことが起きるのか想像すらできない。それでも、この人が初めての相手で良かったと心から思える。
「愛しています」
だから、そう囁いた。
* * *
翌日、アリアはリヴァイとバッタリ鉢合わせていた。
ちょうど今から飲みが始まるのか、やはり彼はたくさんの人に囲まれていた。そんな中、アリアの姿を見つけると駆け足でこちらに向かってきた。
「アリア」
「兵長」
リヴァイはポケットから鍵を取り出し、アリアの手のひらに乗せた。
「これは」
「自室の合鍵だ。なるべく遅くならないようにするが、風呂に入ったら先に待っていてくれ」
誰にも聞かれないように、耳元で囁かれる。
昨日からずっと頭の中で考えていたことが、ついに現実となるのだ。
アリアは思わず鍵を握り締めた。
「はい」
こくっと頷くと、リヴァイは嬉しそうに微笑み、アリアから離れた。最後に一度だけ振り返り、彼は瞬く間に仲間たちに囲まれてしまった。
手の中の鍵を見る。
銀色ににぶく光るそれはアリアの心臓をキツく縛り上げた。