第11章 生まれてきてくれてありがとう
「せめて何かプレゼントを、あ、でも買いに行っている時間が……」
午後からもトレーニングはあるし、明日も今日と全く同じ予定を組んでいる。プレゼントを買いに行く時間も、何を買おうか悩んでいる時間もない。
「じゃあ飲み会に来たら?」
ハンジの提案にアリアはなんとも言えない顔をした。
「怪我のせいでお酒が飲めなくなっちゃって」
胃が半分潰れたせいで食べていいもの、飲んでいいものがずいぶんと制限されてしまっているのだ。それほど食事ができないアリアがいても気を遣われるだろうし、何よりあまりそういった飲みの場が得意ではなかった。
「う〜〜ん、そっか。残念だなぁ」
「別に当日祝ってくれなくても、」
「ダメです! こういうのは大事なんですよ!」
リヴァイの言葉を即座に却下し、ふんすと意気込む。
当日に祝わなくて何が誕生日だ。祝いの言葉だけ、というのも納得できない。きちんとしたプレゼントをあげたいのだ。
「なんとかして用意してみせます!」
「すごい熱量だ」
「良い部下を持ったな、リヴァイ」
「……アリア、あとで俺の執務室に来い」
しばらく何か考え込んでいたリヴァイは不意に顔を上げて言った。
そしてそれ以上何も言うことはない、と言いたげに立ち上がって食堂を後にした。突然残されたアリアはポカンと口を開けてその後ろ姿を見送る。
「は、はい……?」
いったい、なんだろう。