第11章 生まれてきてくれてありがとう
目を瞬かせる。
「たんじょうび」
そして呟く。初めて聞いた言葉を復唱するように。
「リヴァイ兵長の……」
どこか気まずそうにリヴァイの顔が逸らされた。
何かを察したエルヴィンがリヴァイを見る。
ハンジはこてんと首を傾げた。
「あれ、アリア、知らなかったの?」
アリアは深呼吸をした。
落ち着こう。一旦落ち着こう。そういえばリヴァイの誕生日をアリアは知らなかった。知り合ってから数年経っているが、そうか、誕生日。へぇ、誕生日。
「今、初めて聞きました」
穏やかな微笑みで言う。
「リヴァイ」
呆れたようなエルヴィンの声に、リヴァイは腕を組んだ。
「まぁ、アリアが知らないのも無理ないよ。私たちだって彼の誕生日を知ったのはついこの間なんだから」
助け舟を出すようにナナバが言う。その言葉にほかの幹部たちも揃って頷いた。
「この中で知ってたのはエルヴィンだけだよ」
「私もリヴァイから無理やり聞き出したようなものだ」
「黙ってて悪かった、アリア」
「いえ、そんな。それでリヴァイ兵長のお誕生日っていつなんですか?」
白々しい空咳が響く。
「明日だ」
咄嗟にアリアはこめかみを押さえた。たった今与えられた情報を整理しようと脳みそが音を立てて回転する。
「あした」
復唱。
「明日!?!」
絶叫。
あ、明日!?!?!
「聞いてないです!!」
「言ってないからな」
「言ってくださいよ!」
「祝えって言ってるみてぇだろうが」
「い、祝いたいですよ! というか祝わせてください!!」
もう本当にこの人は!
ムッと頬を膨らませた。
祝いたいに決まっている。尊敬する上官で、愛すべき恋人なのだから。
リヴァイとアリアが恋仲であることを知っているのは限られている。エルヴィンとハンジ、そしてペトラ。この3名のみ。
エルヴィンとハンジは顔を見合わせ、アリアの怒りは最もだ、と言いたげに頷いた。