第11章 生まれてきてくれてありがとう
カツン、とリヴァイの足が止まった。その後ろにアリアも立ち止まる。
そこはリヴァイの執務室の前だった。
「新しいメンバーに招集をかけておいた。中にいる奴らはまだ自分が選ばれたことを知らない」
「サプライズってやつですね」
「あぁ。お前もよく知っている人間だ」
言いながら、リヴァイはドアノブを捻った。
「アリアさん!」
パッと弾けるような声が部屋の中に響いた。
中には二人の青年が立っていた。そのどちらも、アリアは顔をよく知っていた。
「エルド! グンタ!」
アリアは歓声を上げた。
リヴァイのほうをちらりと見ると、彼は小さく頷く。
顔を綻ばせ、アリアは二人の元に駆け寄った。
「二人とも、まさか!」
「お久しぶりです、アリアさん!」
「でも、どうしてアリアさんが? 俺たちはリヴァイ兵長に呼び出されて……」
エルドはアリアとかたく握手をかわし、グンタは不思議そうに首を傾げる。
「ふふっ、どうしてだと思う?」
二人は瞬きをして顔を見合わせた。
思い当たったのはほとんど同時だった。
薄々予感はしていたのだろう。信じられない、というように目が見開かれ、それから確かめるようにリヴァイを見る。
「エルド・ジン、グンタ・シュルツ。今日からお前たちを特別作戦班の班員とする」
よく響く、深い声だった。
エルドとグンタは喜びをすぐさま押し殺し、右の握り拳を左胸に叩きつけた。握りしめた右手は微かに震えている。アリアは息を胸いっぱいに吸い込み、笑った。
「おめでとう、二人とも」
この言葉をかけるべきなのか迷いもあった。ただでさえ死亡率の高い調査兵団の、最も死に近い班に所属されたのだ。この若い命がいつ散ったとしてもおかしくはない。
だが、それでも。
新兵だったエルドは何度も壁外調査を経験し、死地を潜り抜けた。
グンタだって、強くなる素質は十分にある。何より、大怪我を負っていながら生き延びる胆力があった。
「ようこそ、特別作戦班へ」
二人ならきっと。
それぞれの顔を見つめる。
「歓迎するよ」