第11章 生まれてきてくれてありがとう
「それで、特別作戦班の新しい班員のことでしたっけ」
むすっ、と眉間に皺を寄せたリヴァイに軽く頭を叩かれ、アリアは肩をすくめた。再び歩き出しながら問いかける。
「あぁ。希望者を募ってそれぞれの技量を確認した。その中から俺は2人の人間を選んだ。なにも言わずに事を進めて悪かったな」
「いえ。リヴァイ兵長が選んだ相手ならわたしも従います。希望者はたくさんいたんですか?」
「それなりに」
「選ばれた2人は強いですか?」
「……ナスヴェッターやエルマーには程遠いが、及第点だ。冬の間にお前のリハビリも兼ねてあいつらの訓練も行う」
リヴァイ直々の特訓か。
アリアは口を閉じ、遠くを見つめた。
きつい日々がまた始まるだろう。大怪我をした報いだ。
「怪我の具合はどうなった? リハビリは順調か?」
ちらりとリヴァイが横を見る。
アリアは物思いから覚め、軽く頷いた。
「骨折も無事に骨が繋がりましたし、内臓のほうも大丈夫です。先生とのリハビリもあと1回行えば終わりです! でも……」
「でも?」
「胃が半分なくなったせいでご飯の量が減ったのが少し悲しくて……。消化に悪いものは食べられなくなっちゃいましたし、甘いものも控えるようにって」
「…………」
「なんですかその顔。“なーんだ、そんなことでこの世の終わりみたいな顔してるのかこいつは”って言いたいんですか?」
「なにも言ってねぇだろ」
「はぁ……ペトラたちと麓のケーキ屋さんでお茶しようって壁外調査に行く前に約束してたのに……」
「お前の代わりにあいつらが美味そうに食ってくれるだろ」
「……その顔を見ながらわたしは紅茶を飲みますよ」
ケーキの上に乗っているフルーツくらいなら食べても平気かもしれない。あれ? なんでこんな話してるんだっけ。
話の終着点がよくわからなくなり、アリアは静かに混乱していた。
「まぁ、治療も順調ならいい。これに懲りたら二度とあんな怪我はするな」
低く、釘を刺すような口調にアリアはなにも答えられなかった。無責任に頷くことはできない。
「善処します」
次は生き延びられないかもしれない。次は、死ぬかもしれない。今度こそ。
だからこそ、強くならなければいけないのだ。