第11章 生まれてきてくれてありがとう
「似合ってる」
なんとか絞り出した声は驚くほど小さくぶっきらぼうだった。
しかしアリアは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
「本当によく似合っているよ、アリア」
今にも笑い出しそうなのを堪えながらエルヴィンが言う。これくらいペラペラと口が回ればよかったのだが、いかんせんリヴァイは口下手だった。
「結べるくらいの長さに切ってもらったのでバレッタも今まで通りつけることができるんです。下ろしてても立体機動の邪魔にはなりませんし」
「あぁ。爽やかでいいね」
「これで髪の毛を洗うのも楽になります!」
「壁外調査に出る我々としては素晴らしい利点だな」
冒頭の一言を言った後、押し黙ったリヴァイの隣でエルヴィンとアリアは軽やかに会話を続けていく。人の話を黙って聞くのは苦痛ではないが恋人が他の男と楽しげに話しているのは面白くない。
むす、と機嫌が斜めになっていくのを感じた。しかし顔には出さないように腕を組むだけにとどめる。(おそらくエルヴィンは気づいているはずだ)
「そうだ、アリア」
ちらりとリヴァイの方に目線をやったエルヴィンが言った。
「特別作戦班のことでリヴァイが話があると言っていたぞ。そうだろ? リヴァイ」
「あ?」
あからさまな会話のパスに一瞬反応が遅れる。
エルヴィンは薄く笑っていた。気遣われてしまった。
「あぁ、アリア、今から予定はあるか?」
「いえ。ありません」
特別作戦班のこと、と聞いたアリアは一気に表情を引き締める。兵士の顔だ。リヴァイも不機嫌を遠くへ押しやり、軽く咳払いをした。
「俺の執務室に来い。特別作戦班の次の班員について話がある」
リヴァイの言葉に、アリアは短く頷いた。