第3章 正しいと思う方を
「気持ちはわからないでもないよ。でも1回でいいからリヴァイの立体機動を見てごらん。本当に圧倒されるから」
ハンジがそこまで言うとは本当なのだろう。
アリアとオリヴィアは顔を見合わせた。
明日立体機動の訓練と馬術の訓練がある。そのときに見られるかもしれない。
「でもでも、そのリヴァイって人、小柄でした! 窃盗団のリーダーだったなんて……」
オリヴィアが思い出したように言う。
その言葉にハンジは声を出して笑った。
「たしかに! 話に聞いたときはもっとゴリゴリのマッチョ想像してたのにやって来たのは20代後半の小柄な奴なんて笑っちゃうよね〜」
「アリアと同じくらいの背じゃないかしら?」
「ちょっと見ただけだけどたぶん同じかわたしより少し高いくらいかな。というかあの人20代後半なんですか!?」
「え、そこ?」
「身長のせいでもっと若いかと思ってました」
同い年とまではいかないが、20歳かそこらかと思っていた。その割には貫禄と迫力のある顔つきだったが。
(……目つきも悪いし小柄だけど…………カッコよかったな)
よく見たわけではないが、目鼻立ちは整っていたし端正な顔つきをしていた。
(ハッ、いやいやいや、わたしはなにを……! 地下街のゴロツキなんかに!)
「アリア?」
「ひゃっ!」
「考えごと?」
怪訝そうに顔を覗き込んでくるオリヴィアとハンジにアリアは誤魔化すようにへらっと笑った。
「え、えっと……あ、明日の馬術訓練について考えてて!」
「あー! エルヴィンから聞いたよ! あの黒馬を選んだんでしょ?」
「はい。グリュックと名づけました」
「大変だと思うけど頑張ってね」
「はい!」
アリアが力強く頷くと、ハンジは優しく微笑んだ。