第3章 正しいと思う方を
アリアは目の前で熱く議論をする親友と上官をぼんやりと眺めていた。
「そしたらライがこんな反応をしたんだ!」
「えぇ!! そ、そうなんですか!?」
過去の実験の記録用紙を片手にハンジは熱弁をふるい、それに合わせてオリヴィアが大きく目を見開いている。
アリアは机に置かれた紅茶のカップに手を伸ばした。
1口飲むと、ほのかな甘みが鼻を抜け、とても美味しい。さすがハンジ班長。
「あ、そうだハンジさん」
一通り議論が終わったころ、オリヴィアが口を開いた。
「地下街から来たっていう兵士のことなにかご存知ですか?」
「ん? あぁ、そっか。君たちは彼らが来てから入団したんだったね」
ハンジの部下であるモブリットが用意してくれた茶菓子をつまみ、ハンジは頷いた。
アリアはおかわりの紅茶をもらい、オリヴィアを見た。彼女はこの話を聞かせるためにアリアをここまで連れてきたのだろう。
「赤毛の女の子がイザベル・マグノリア。背の高い青年がファーラン・チャーチ。それで黒髪の無愛想な男がリヴァイ。3人とも地下街で窃盗団をしていたらしいよ」
アリアの脳内の3人組にそれぞれ名前が振り当てられていく。
「リヴァイって男は窃盗団のリーダーしていて、立体機動装置を使っていたんだ」
「地下街に立体機動装置があるんですか?」
思わずアリアが聞くと、ハンジはどこか困ったように肩をすくめた。
「地下街には闇市っていうのがあってね。そこには様々なものが売ってあるんだ。立体機動装置はもちろん、憲兵団の制服なんかも売られているらしい。なにに使うんだか」
犯罪の匂いしかしない。
顔をしかめたアリアにハンジは「ははっ」と笑った。
「でも3人の立体機動の腕はたしかだ。リヴァイはずば抜けてる。あとの2人も新兵よりも優れてるんじゃないかな」
「なんか複雑ですね……」
「たしかに」
苦い顔をするオリヴィアにアリアも同意する。
必死に訓練を重ねてきた自分たちと地下街の窃盗団が同じレベルなんて。