第10章 愛してる
「たとえそれが、君に死を強制させるようなものでもか?」
アリアは瞬きをした。
「はい」
迷いなどない。そうしなければならない。それがアリアの責任だった。それが、彼を悪魔にしてしまったことへの責任なのだ。
「だから、団長」
身を乗り出す。その瞳を見つめる。アリアの声は覚悟によって震えていた。
「これからもあなたは悪魔であり続けてください」
なにがあろうと。
どれだけ辛くても。
逃げだしたくても。
アリアがそれを引き止める。弟に海を見せるために。彼らを殺してしまった償いのために。
エルヴィンは浅く息を吸った。青白い頬を大きな手で撫でる。目元を押さえ、「あぁ」と消え入りそうな声で言った。
「そうだ」
ぱたり、と手が落とされた。
暗い目で彼はアリアを真正面から見据えた。
「なにがあろうと私は、進み続ける。夢を叶えるために」
最後の言葉はほとんど聞こえなかった。だがアリアには聞こえた。夢のために。エルヴィンの夢とはなんなのか。それを知る日が来るのだろうか。だがひとつ、わかったことがあった。
「アリア。君と私はよく似ているな」
「えぇ」
ふたりはとても似ている。