第10章 愛してる
「特別作戦班に入って、今よりもっと強くなって、そして」
彼の目はどこまでも澄み渡っていた。
「あなたの隣で戦いたい」
それがあまりにも眩しくて。
頬に一筋の涙が伝うのを感じた。ポロポロとこぼれていく。グンタは驚き、椅子の上でわずかに腰を浮かした。
「アリアさん!?」
アリアはそれを拭うこともせず、ただ流し続けていた。何か言わなくてはいけないとわかっていたのに、言葉が浮かばなかった。唇を震わせ、息を吸う。
「あなたが、生きていてよかったって、おもって」
アリアは顔を歪めて笑った。
脳裏によぎるのは見捨てるしかなかった大切な仲間たち。彼らの犠牲は無駄ではなかった。本当に、この瞬間心からそう思えた。
「みんな、」
勇ましく前を見据えるエルマー。
唇を引き結び、覚悟を決めたフローラ。
振り返り、アリアに微笑むナスヴェッター。
彼らの最期の姿はいつまでもアリアのまぶたの裏に焼きついている。彼らが捧げた心臓は決して無駄ではなかった。決して。
「みんなの死には、意味があった。あなたが生き残り、強くなりたいと言ってくれたから」
死者に意味を与える。それができるのは生者だけなのだ。
グンタは手を伸ばし、少しためらった後そっとアリアの手に重ねた。折れた骨が痛まないようにと気遣うその仕草は限りなく優しかった。
アリアが泣き止むまで、その手はずっとそこにあった。