第10章 愛してる
新しく聞こえてきた声に、アリアは布団から顔を出した。そして遠慮がちに立っている青年の姿を見て声をあげた。
「グンタ!」
「アリアさん……!」
グンタはアリアの顔を見ると、心から安心したように表情を緩めた。だが慌てて口元を引き締め、右拳を左胸に当てた。
「第3分隊7班所属、グンタ・シュルツです」
「確か、アリアと補給地点に来てた奴か」
「は、はい」
リヴァイにじっと見つめられ、グンタはきゅっと背筋を伸ばした。緊張が手に取るように伝わってくる。
「アリアさんが目覚めたと聞いて、いてもたってもいられず」
「グンタ、もう怪我は大丈夫なの?」
「はい。傷も塞がったので、あとは抜糸をするだけです。さすがに訓練に参加はできませんが」
それを聞いてアリアも安心する。
あの絶望的な状況で彼だけでも生き残らせることができた。だが、他の3人は──
「それじゃ、私たちはそろそろ行くよ。君もアリアに話があるんだろう?」
言いながら、ハンジは立ち上がった。リヴァイも短く頷いてそれに続く。
「また来る」
アリアのそばを離れる時、リヴァイは振り返って言った。
本当に小さな声で、おそらくアリア以外には聞こえなかったはずだ。だがアリアには届いていた。
アリアは口元を綻ばせ、頷いた。
「待ってます」
最後にリヴァイは穏やかに微笑んで医務室を出て行った。
残されたグンタはちょっと躊躇うような仕草を見せたあと、ハンジが座っていた椅子に腰を下ろした。
「あの、アリアさん、えっと、」
目を泳がせて言葉に詰まる。アリアは辛抱強く待った。
「俺、アリアさんに言わなきゃいけないことがたくさんあるんです」
「うん」
「まず、ありがとうございます」
心を決め、グンタは真っ直ぐアリアを見据えた。