第10章 愛してる
「だからうるせぇ」
「かーーーっそんなこと言っちゃう!? ほんと君ねぇ、そういう報告は早く言ってもらわないと。え、なに? どっちから告白したの?」
「…………」
「あーわかったわかった、プライベートなことだから聞くなって? でもさぁ、ほら、私たちも応援してたんだよ? さっさとくっつかないかなぁって。あ。私たちっていうのは私とエルヴィンのことね? だって君たちお互いに気持ちダダ漏れだったじゃん。いざとなったら私がなんとかしてやろうと思ってたくらいだよ。はー、いいねぇ恋って」
「…………」
「で、告白したその日に部屋に連れ込んだと」
「人聞きの悪ぃことを言うな」
「わかってるよ。仕方がなかった。ま、あの状態のアリアを一人で医務室に帰さなかったのは懸命な判断だと思うよ。うん」
マグカップに口をつけ、あち、と呟く。
リヴァイは眉間にシワを寄せてそんなハンジを見ていた。
懸命な判断だった。そう言いながら、ハンジは全く納得していないように見える。
「言いたいことがあるなら言え」
「……本当に何もなかった?」
「あ?」
ハンジは真顔になると、リヴァイを真っ直ぐに見据えた。
その眼光は鋭く、普通の人間が見れば寿命を縮めてしまうような恐ろしさがあった。彼女は心からアリアのことを案じているのだ。
「なかった。何も」
キッパリと言い切る。
事実そうなのだから嘘は言っていない。何かがあったことはあったが、結局はリヴァイの理性が勝利したのだから文句を言われる筋合いはどこにもない。
「そう、ならいいんだ」
ハンジは肩をすくめ、頬杖をついた。
「恐ろしいね、あの子は」
食堂のざわめきに身を浸していたリヴァイは、ハンジの言葉に意識を戻した。コップに入った水を飲み干す。
「なんの話だ」
「あの子はあの時、本気でエルヴィンを殺そうとしていた」