第10章 愛してる
部屋に鍵をかけるのを忘れていた。
ドアノブを回し、そのことを思い出す。あまりにも急いでいたせいだ。
ドアを開けて先にアリアを通す。
「おじゃまします」
小さな声でアリアは言う。
鍵を閉め、ランプに火を灯して回る。
リヴァイの部屋は殺風景なところだった。彼の性格を考えれば当たり前のことだが。逆にハンジの執務室のように物が溢れているところで寝起きするリヴァイ、というのも想像できない。
アリアはどうすればいいのかわからず部屋の中央で立ち尽くしていた。
「とりあえず先にシャワー浴びてこい。着替え、は、まぁ俺のでいいか。丈は問題ねぇだろ」
頭をぐしゃぐしゃと掻き回し、余計なことを考えないようにしながら口を動かす。
「あの、リヴァイさん」
シャワー室まで案内されたアリアがふと振り返った。
着替えとタオルを抱えてアリアの後ろにいたリヴァイは首を傾ける。
「包帯を、ほどいてもらってもいいですか?」
「包帯?」
こく、とアリアは頷き、両腕を軽く上げた。
「腕と胴体が包帯で固定されてるんです」
両腕、肋骨の骨折と内臓の損傷。
それはリヴァイが医者から聞いたアリアの容体だった。あれからまだ一週間しか経っていない。包帯を巻いているのは何も不思議ではないし、よくそんな怪我で動けたな、と感心する。
「あぁ、分かった」
「ありがとうございます」
包帯をほどくくらい何も問題はない。
リヴァイが頷いてみせると、アリアはホッとしたように言った。
着替えを床に置き、両腕の袖をまくる。
慎重に結び目をほどき、するすると外した。添え木は重い音を立ててリヴァイの手の中に収まった。
「めくるぞ」
「はい」
次は胴体だ。謎の緊張を覚えながら、裾を持ち上げる。アリアは口をぱかっと開けてそれを咥えた。腕で押さえることはできないから懸命な判断だ。が、リヴァイにとっては目の毒すぎる。
なるべく目線を遠くにやりつつ、アリアの背中に手を回した。