第10章 愛してる
「部屋? リヴァイさんの?」
「ああ。このままずぶ濡れで医務室に戻るわけにはいかねぇだろ」
「へや……」
ずいぶんぼんやりした調子でアリアが復唱する。
この時、アリアはリヴァイの言葉の意味をあまり理解していなかった。怪我はひどく痛んでいるし、泣きすぎてまぶたが重い。しかも寒さのせいでまともな思考ができる状態ではなかったのだ。
だからこそ、リヴァイの部屋へ行くことになってもそれほど重大なことだとは思わなかった。いつもの彼女なら、顔を真っ赤にして拒否するだろう。
「知ってるとは思うが、幹部の自室にはシャワーが設置されてる。とりあえずそれであたたまるぞ」
「しゃわー……」
言いながら、リヴァイは顔をしかめた。
ようやく自分の想いを告げることのできたその日にアリアを部屋に連れ込むなど誰が想像できた? しかもアリアが弱っている時に。
「手は出さねぇから安心しろ」
「て……」
本当はもう少し時間をかけて、互いに心の準備ができた時に招きたかった。信じられないとは思うが、そういったことにかけてリヴァイは少々ロマンチストになるのだ。だが今ばかりは仕方がない。緊急事態というやつだ。そう、仕方ない。
「リヴァイさんのこと、信じてますから」
心の中でジタバタと暴れながら歩いていたリヴァイは、アリアの言葉に後ろを振り返る。彼女はやはりぼーっとした顔で微笑んだ。リヴァイはきゅっと唇を結ぶ。
「あぁ」
やがて出てきたのは、絞り出したような小さな声だった。