第10章 愛してる
リヴァイは近くに脱ぎ捨てていた上着を引き寄せてアリアに着せた。
「そろそろ戻るぞ」
二人ともずぶ濡れだ。冬の夜にこんな格好でいたら風邪をひくに決まっている。アリアは弱々しく笑った。
アリアを横抱きにして立ち上がる。
すぐそばでグリュックが当然のように膝をついていた。
「グリュックが俺をここまで連れてきたんだ。お前を助けようとして」
「……そうだったんですね」
アリアは優しくグリュックを撫でる。彼はじっと相棒を見つめた後、安心したようにまぶたを閉じた。
「ここで死のうと思っていたから、この子を自由にしてあげたかったんです。彼にはもう巨人と戦ってほしくなかったから」
アリアを前に乗せてグリュックは歩き出す。
アリアが落ちないように後ろから彼女の体を支えながらリヴァイは相槌を打つ。
「ごめんね、グリュック。わたしはあなたのことを全然想ってあげられてなかった」
ようやく心を通わせることができたというのに、ここでアリアが死んでしまえばグリュックはまたひとりぼっちになってしまう。
アリアは心底申し訳なさそうに言った。
やがて沈黙が落ちる。
蹄の音と、グリュックの鼻息、アリアとリヴァイの息遣いだけが森の中に響いていた。
それからどれだけ経っただろうか。
森を出て、兵舎が見えてくる。無意識のうちにリヴァイは安堵の息を吐いていた。
グリュックを厩舎に戻し、さてどうしようかと考える。
ずぶ濡れのままアリアを医務室に帰すわけにはいかない。しかしこの時間にシャワー室は開いていなかった。
「アリア」
「はい」
「お前の着替えは部屋にあるのか?」
「はい、ありますよ」
「ルームメイトは?」
「ええと、5人います」
「……着替えを取りに入るわけにはいかねぇか」
しょうがない。
リヴァイはため息をこぼし、アリアの手を取って歩き出した。
「リヴァイさん、どこへ?」
不思議そうに聞くアリアを振り返る。
「俺の部屋だ」